マムFPオフィス 菊地季美子です。
私はSBI証券のiDeCoセレクトプランに加入しており、公的年金の心許無さに不安を抱いているので、第二号被保険者の掛金上限である月額23,000円を積み立て続けています。
株式投資やFXではないので運用益はそれほど大きくないですが、小さな動きでも上がっていると嬉しいものです。
今回はそんなiDeCoについて調べたことをまとめました。
老後の備えに手軽に始められるiDeCoですが、元本確保型と元本変動型の違い、コスト、リスクを把握しないまま運用していると、せっかくの運用益だけでなく元本まで減ってしまう「手数料負け」を起こす場合があります。
本記事では、iDeCoのメリットである運用益の非課税を最大限に活かすための銘柄の選び方や、毎月発生する手数料以外でかかっているコストの下げ方、商品に伴うリスクの解説と対策を説明します。
iDeCoの仕組みと3つのメリット
日本の年金制度は公的年金と私的年金があり、iDeCoは私的年金の一種です。正式名称を「個人型確定拠出年金」と言い、個人でいつでも申し込みが可能で、運用方法を自分で選んで掛金を積み立てていきます。公的年金の加入者で20歳以上60歳未満の人なら誰でも加入でき、2022年5月からは65歳未満まで加入要件が拡大される予定ですので、より長期的な運用を視野に入れた積立が可能です。
iDeCoを活用するうえで受けられるメリットには、「掛金の所得控除」「運用益の非課税」「受け取り時の控除」の3つがあり、このメリットをうまく利用することでより効率的に老後資金を形成できます。
ちなみに掛金の所得控除による節税効果は、下記のiDeCo公式サイトで簡単にシミュレーションできます。
iDeCoの商品は2種類に分けられる
iDeCoの対象商品は「元本確保型」と「元本変動型」の2種類があります。
元本確保型には保険と定期預金があり、満期まで保有することで元本と契約時に定められた金利が確保される商品です。保険商品は個人年金保険や終身保険など貯蓄性のあるものが中心で、定期預金は金融機関により期間や利息が変わります。
現在は低金利下のため、元本確保型は60歳まで引き出せないまま手数料ばかりかかってしまい、運用益が上がらないので元本が目減りしてしまう恐れがあります。特に定期預金は、物価が上昇し貨幣価値が下がるインフレに大変弱く、金利上昇も期待できないため運用益非課税のメリットも活かせないので、資産を増やすには不向きです。
一方で元本変動型は、運用環境によって元本が変動する投資信託で、国内外の株式や債券などに投資してお金を運用します。運用成績によって元本が減る恐れはあるものの、各ファンドのメリットとデメリットを把握して運用すれば利益が期待できますので、iDeCoの最大の魅力である運用益非課税のメリットが活かせます。
iDeCoで運用できる投資信託の種類と、投資信託に伴うリスク
iDeCoの元本変動型商品である投資信託は「ファンド」と言い、株式ファンドと債券ファンドがあります。それぞれが国内型と外国型(グローバル型)に分かれており、外国型にはさらに先進国と新興国があります。加えて、それらを組み合わせたバランス型ファンドも存在します。
ここで、各ファンドの解説とメリット・デメリットを挙げていきます。
- 国内株式ファンド:国内の株式市場で取り引きされている約4,000銘柄から厳選された各種株式に投資する。投資の対象が分かりやすく、インフレにも強く換金時に為替相場の影響を受けない半面、日本以外の成長企業が生み出すリターンの恩恵は受けられない。また、価格変動リスクの影響を受けやすい。
- 海外株式ファンド:海外の各種株式に投資する。特定の国の株式だけでなく、複数の国や地域にまたがって投資することもでき、日本以外の成長企業が生み出すリターンを享受できる。先進国の値動きは比較的穏やかなものの、新興国は価格変動が大きく先進国よりもカントリーリスクなど強い反面、高めのリターンが期待できる。インフレには強いが、収益が為替相場の影響を受ける為替変動リスクがある。
- 国内債券ファンド:日本国内の各種公社債に投資する。値動きは安定しているが株式に比べて小さく利回りも低いため、低金利下の日本の国債は運用効果が薄く、加えてインフレにも弱い。また、金利上昇局面では債券価格が短期間で下落する金利変動リスクがある。
- 外国債券ファンド:海外の特定の国・複数の国や地域が発行する公社債に投資する。先進国の債券は値動きが安定していて安全性が高い。新興国の債券は利回りが高いが、インフレや金融危機などによる暴落のリスクがある。海外株式ファンドと同様、収益が為替相場の影響を受ける為替変動リスクがある。
- バランス型ファンド:上記4つそれぞれ単独に投資するのではなく、国内外の株式、債券、不動産を組み入れたもの。リスクとリターンが異なる資産に分散投資し、一方の資産のマイナスを別の資産でカバーする設計。自分で様々なファンドを比較検討し購入する手間がかからず、安定した運用が期待できるが、値下がりした時の要因がわかりにくくリスク対策がとりづらい。
投資信託に伴う主なリスクは、下記の5つがあります。
リスクの種類 |
リスクの解説 |
影響を受ける投資信託 |
価格変動リスク |
国内の景気や海外情勢、物価や為替の動きなどを要因として、株式や債券の資産価値が変動する可能性のこと。 |
株式型 債券型 |
為替変動リスク |
円と外国為替相場の変動により、外貨建て資産で価値が変動する可能性のこと。外貨建ての資産を対象とした投資信託では基準価額に影響を受ける。 |
外国株式型 外国債券型 |
信用リスク |
国や企業といった有価証券発行元が、財政難や経営不振などにより債務不履行が起こる可能性のこと。 |
債券型 株式型 |
金利変動リスク |
金利の変動により、債券などの資産で価値が変動する可能性のこと。一般的に、市場の金利が上昇すると債券価格は下落する。 |
債券型 |
カントリーリスク |
投資対象の国や地域で起きた出来事により、投資信託の資産価格が影響を受ける可能性のこと。 |
新興国対象の債券型・株式型 |
これらのリスクを減らすためには分散投資が不可欠です。掛金を複数の異なるファンドに配分することを「アセットアロケーション」といい、国内・海外それぞれの株式・債券など複数ファンドをバランス良く保有することで、上記のリスクを下げることができます。
投資で損をしない3大ルールは「長期」・「積立」・「分散」です。攻めよりも守りを意識して想定以上のリスクを取らないようにすれば、得たリターンを減らさずにコツコツ確実に増やしていけて、長期の積立であるほど効果が高まります。
投資信託の銘柄を選ぶ際の考え方
投資信託の商品は「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類に分けられます。
インデックス型は、日経平均株価やTOPIXの指数と同じ値動きをするように設計された機械判定の投資信託です。
アクティブ型は、インデックス型を上回る成績を目指す人的判定の投資信託のため利益は期待できますが、専門家に運用を委託するため企業分析・調査などの手数料にコストがかかります。
リスクを避けて運用したい場合はインデックス型、リターン重視ならアクティブ型が基本的な考え方ですが、投資初心者はまず機械判定のインデックス型で勉強するのもよいでしょう。アクティブ型は人的判定ですから、プロとはいえ運用にはどうしても多少の主観や好みが入りますので、初心者にはやや扱いづらい傾向があります。加えて、信託報酬が高いこともアクティブ型のデメリットです。
投資信託は専門家に運用を委託するので、運用管理費用として「信託報酬」という手数料がかかります。これは毎日発生するので、長期になるほど支払額が増え、運用益がないと資産が目減りしてしまいます。信託報酬率が高い商品はハイリスク・ハイリターンであることが多く、安定した商品は信託報酬率も低めなので、信託報酬は商品選択の目安にもなります。長期の運用では年0.1~0.2%の違いが大きな差となるので、信託報酬率は多くても0.5%以下のものを選ぶようにしましょう。
信託報酬以外で銘柄選択の目安となる指標は、「基準価額」・「純資産総額」・「トータルリターン」・「騰落率」があります。
- 基準価額:株式における株価に該当するもの。設定時を10,000円として計算される。投資信託の時価総額に利息や配当金などを加え、そこから運用コストを差し引いた額(純資産総額)を投資信託の総口数で割って算出する。
- 純資産総額:その投資信託が持っている全ての財産を合計した金額。時価総額から運用コストを差し引いたもの。額が大きいほど投資する人が多く、支持を集めている銘柄であると言える。基準価額と純資産総額が同時に上昇している商品は多くの投資家に買われているという指標で信頼性が高い。
- トータルリターン:一定期間内に投資信託から得られた譲渡益と分配金を含む収益をパーセンテージで表したもの。基準価格の変化率。
- 騰落率:その投資信託の基準価額がどれだけ上下したかを表す。トータルリターンとの違いは、投資信託にかかった手数料や分配金は含まれない点。
iDeCo公式サイトでは、信託報酬やリターンを比較することができます。
iDeCoの各金融機関の取り扱い銘柄は、投資信託評価会社「モーニングスター」のwebページで見ることができます。
まとめ
私的年金であるiDeCoのメリットは税制優遇措置です。
せっかくの運用益非課税も、リスクを避けるあまりに間違った商品選びをすると、運用益どころか元本まで目減りしてしまいます。iDeCoの節税効果を最大限に活かすためには、元本変動型の投資信託を分散投資によってリスクを減らし、時間を味方につけてコツコツ確実に積み立てていきましょう。
銘柄選びには様々な指標がありますが、信託報酬は毎日発生するので長期の投資には大きなコストになります。資産の目減りを避けるため、なるべく信託報酬率が低い銘柄を選択しましょう。